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三枚続(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

喧嘩っ早い職人と雛の令嬢

  • 心理
  • 恋愛

泉鏡花 1900年(明治33年)8月 「大阪毎日新聞」

文字数
63,608字
読了目安
約2時間7分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1900年(明治33年)8月9日から9月27日まで『大阪毎日新聞』に連載された新聞小説。後に『式部小路』(1906年)へと続く。日本橋人形町の床屋の職人・愛吉と、没落した深川の大家の娘・お夏との、身分も気性も違う二人のやり取りを軸に、江戸の下町の人情と、気位の高いお夏を取り巻く小さな騒動が描かれる。愛吉の啖呵や酒場の長い語りなど、会話の勢いが魅力で、1961年の映画『みだれ髪』の原作にもなったとされる。

あらすじ

日本橋人形町の床屋・紋床の下職人、愛吉は、酒と喧嘩が好きな荒くれ者。根岸の歌人鴨川のもとへ歌を習いに通う柳屋のお夏を、世話になった勝山の娘として慕っていた。ある暑い日、お夏が鴨川の家を訪ねると、内室から、華族の姫・山河内の娘を団扇で煽ぐよう命じられ、侮辱を受けて帰る。それを知った愛吉は、借りた五ツ紋を着て鴨川の屋敷へ乗り込む。愛吉は新聞記者の遠山金之助に、お夏との縁を語る。築地の医学士・山の井の診察所で初めて見たお夏、父が勝山の船頭だった恩、勝山がひな祭りの夜に火事で焼けた顛末、鯰の伝六との喧嘩。さらに柳屋の軒に飼われた軍鶏の宵啼きを火事の前触れと恐れた町内の人々が、軍鶏を殺そうと騒ぎ立てた夜、愛吉とお夏は力を合わせてそれを守った。物語の終わり、愛吉は、自分が出入りしていることが原因でお夏の縁談が一つ破れたと新聞記者から聞かされたと明かし、お夏に暇乞いを切り出す。

登場人物

冒頭部(原文より)

「どうも相済みません、昨日もおいで下さいましたそうで毎度恐入ります。」  と慇懃にいいながら、ばりかんを持って椅子なる客の後へ廻ったのは、日本橋人形町通の、茂った葉柳の下に、おかめ煎餅と見事な看板を出した小さな角店を曲って、突当の煉瓦の私立学校と背合せになっている紋床の親方、名を紋三郎といって大の怠惰者、若い女房があり、嬰児も出来たし、母親もあるのに、東西南北、その日その日、風の吹く方にぶらぶらと遊びに出て、思い出すまでは家に帰らず、大切な客を断るのに母親は愚痴になり、女房は泣声になる始末。

「三枚続」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 口惜いのは、お嬢さんに団扇で煽がせた時がと言うと、あの鴨川めが肝入で、山河内の娘に見合をさせるのに、先生を呼んだ日だと謂いますわ。敵だもの、おまけに、私が帰ったあとで、あなたの相談がどうなります。それに、まだ、そんな事じゃあない、といいますのはあの若先生は、お嬢さん、あなたが誰にもおっしゃらないで、心で思っていらっしゃる、……」 「愛吉!」 「いいえ、分ってます。誰も知りませんが、これを、いって聞かしたのは、竹永丹平という、新聞社の探訪員。」

「三枚続」泉鏡花(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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