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三人の盲の話(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

靄の坂で呼び止める三人の盲

  • 怪奇
  • 幻想

泉鏡花 1912年(大正元年)4月 「中央公論」

文字数
8,937字
読了目安
約18分
表記
旧字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1912年(明治45年)4月、雑誌『中央公論』に発表された怪異譚。冬の夜更けの四谷の坂で、恋人のもとへ急ぐ男が、すれ違った三人連れの按摩に呼び止められる。靄と瓦斯燈、杖の音という限られた道具立てのなかで、按摩が語る三年前の出来事が少しずつ明らかになり、男の足を止める力を持っていく。短い作品ながら、旧字旧仮名の硬質な文体が夜の冷え込みと不気味さを高め、会話だけで進む怪談の呼吸を楽しめる。なお、青空文庫の注記のとおり、今日では不適切とされうる表現が当時のままに残されている。

あらすじ

靄の濃い冬の夜更け、四谷の坂を上る男は、恋人のもとへ急ぐ途中で三人連れの按摩に呼び止められる。坂の上から数えて五本目の瓦斯燈にだけ灯が残っているが、そこには人の影を吸い、舐め、踏みつける魔ものが出るので通ってはならない、と痩せた按摩は言う。按摩は三年前、同じ坂で、先達の盲人(長頭の男)から同じ警告を受けた。信じずに逢いに行き、恋人に魔ものの話を告げて問い詰めたが、恋人は自分の影に怯えて、薬で自ら両眼を盲にしていた。按摩も針で自分の目を突いた。その盲人は、じつは恋人に横恋慕して付きまとっていた男で、呪われたのだと二人は悟る。語り終えた三人は男に暇乞いをして靄のなかへ消えていく。女が涙を拭った紅絹だけが、蝶のように靄を縫って見える。

登場人物

冒頭部(原文より)

「もし/\、其處へ行らつしやりますお方。」……と呼ぶ。  呼ばれた坂上は、此の聲を聞くと、外套の襟から先づ悚然とした。……誰に似て可厭な、何時覺えのある可忌しい調子と云ふのではない。が、辿りかゝつた其のたら/\上りの長い坂の、下から丁ど中央と思ふ處で、靄のむら/\と、動かない渦の中を、見え隱れに、浮いつ沈みつする體で、跫音も聞えぬばかり――四谷の通りから穴の横町へ續く、坂の上から、しよな/\下りて來て、擦違つたと思ふ、と其の聲。

「三人の盲の話」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 言の下より、其處に、話の途中から、さめ/″\と泣いて居た婦は、悄然として、しかも、すらりと立つた。  とぼ/\とした後姿で、長頭から三つの姿、消えたる瓦斯に、幻や、杖の影。  婦が、白い優しい片手で立つ時、眼を拭いた布が姿を偲ぶ……其の紅絹ばかり、ちら/\と……蝶のやうに靄を縫ひ……

「三人の盲の話」泉鏡花(青空文庫)

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