里芋の芽と不動の目(森鴎外)のあらすじ・登場人物
江戸っ子博士の夜語り
- 心理
- 文字数
- 4,451字
- 読了目安
- 約9分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
『スバル』1910年2月号に載った短編。工場の創立二十五年記念の宴会が終わった夜更け、酒の回った所長の理学博士が、親しい者を前に江戸っ子の巻舌で身の上と信条を語る。話は思い付きを人に与える流儀から、戊辰戦争の疎開先での出来事、旧思想の破壊に燃えた兄の思い出へと流れる。ほぼ一人の語りで進み、題の二つの挿話が博士の気質を対照的に示す。
あらすじ
東京化学製造所の創立二十五年記念の宴会が、紅葉館で開かれる。大臣や総長が帰った夜十一時、所長の理学博士増田翼は、親しい友人や若い理学士の花房らと居残って酒を飲み、手あきの女中たちに囲まれている。話は樺太のテレベン油の事業から、人に思い付きを授けてやる自分の流儀へ移り、博士は金に執着しない江戸っ子の気質を、巻舌で語り出す。幕府の造船所に勤めた父と、大鳥圭介に従った兄をもつ博士は、上野戦争のとき母と秩父の百姓家へ逃れた。居候の「江戸の坊様」が、里芋の選り分けで百姓たちを驚かせた思い出に続き、帰京後、旧思想の破壊に熱中する兄が、母の拝む不動の掛物の目を線香で焼き抜いた話が出る。博士は、自分は兄のようなファナティカーではなく、里芋を選り分けるように、化学者としてねちねちと遣って行くのだと言う。十二時になり、博士は電車に乗り遅れないよう、皆を促して席を立つ。
登場人物
- 増田翼 東京化学製造所の所長。理学博士。江戸っ子
- 花房 今年入所した理学士
- 石栗博士 理科の教授。博士の友人
- 博士の兄 旧思想の破壊に力を入れた人物。若くして病没する
冒頭部(原文より)
東京化学製造所は盛に新聞で攻撃せられながら、兎に角一廉の大工場になった。 攻撃は職工の賃銀問題である。賃銀は上げて遣れば好い。しかしどこまでも上げて遣るというわけには行かない。
「里芋の芽と不動の目」森鴎外(青空文庫)
末尾部(原文より)
「十二時です。」 「そうか。諸君は車が待たせてあるから好いが、己はぐずぐずすると電車に乗りはぐれる。さあ、行こう行こう。
「里芋の芽と不動の目」森鴎外(青空文庫)
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