植物医師 郷土喜劇(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
いんちき植物医者の一日
- 風刺
- 社会
- 文字数
- 6,674字
- 読了目安
- 約13分
- 表記
- 新字新仮名
- 舞台
- 岩手県
この作品について
宮沢賢治の戯曲。1920年代の盛岡市郊外を舞台に、開業したての「植物医師」爾薩待正が、枯れた陸稲を持ち込む農民たちを次々と相手にして、いいかげんな診断で薬の代金をせしめ、のちに責められる様子を描く。農民たちの岩手の方言と、医師の口先だけの専門用語の対比がおかしみを生む一幕物。農業の実情に通じた賢治が、素人の知識と農民の現実との落差を、郷土喜劇として笑いに変えている。
あらすじ
一九二〇年代、盛岡市郊外。県庁の耕地整理の仕事を部長と喧嘩してやめた爾薩待正は、借り物の顕微鏡を置いて「植物病院」を開業する。看板屋の徒弟には代金を待たせ、まず訪れた農民には、乾きすぎ、水はけ、蒔きすぎ、肥料と、相手の返事に合わせて次々に原因を言い換えたあげく、立枯病、さらに根切虫の害だと診断し、手持ちの亜砒酸を売りつけて診察料とともに二円を受け取る。続く農民たちには、相手の話を先まわりして針金虫の害と断じ、証明書を書いて薬屋で亜砒酸を買わせ、診察料を取る。半日で十円になったと爾薩待はほくほく顔である。ところが最初の農民が戻ってきて、薬をかけたら稲が見る間に赤くなったと訴える。爾薩待は日中にかけたのが悪い、噴霧器を使わなかったからだと言い逃れようとするが、ほかの農民たちも次々に集まり、口々に責め立てる。六人の農民に詰め寄られて爾薩待はしおれるが、農民たちは、医者にも治せないことはある、運が悪かったとあきらめよう、あまり気を落とさずしっかりやりなさいと言って、帰っていく。
登場人物
- 爾薩待正 開業したての植物医師。もと県庁の耕地整理の技手で、口先で診断を重ねる
- 農民一〜六 陸稲の枯れを相談にくる農民たち。岩手の方言で話し、のちに医師を問い詰める
- ペンキ屋の徒弟 看板を届けにきて、代金を現金で求める
冒頭部(原文より)
粗末なバラック室、卓子二、一は顕微鏡を載せ一は客用、椅子二、爾薩待正 椅子に坐り心配そうに新聞を見て居る。立ってそわそわそこらを直したりする。 「今日はあ。」 「はぁい。」(爾薩待忙しく身づくろいする)
「植物医師 郷土喜劇」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
農民二「さあ、行ぐべ。どうもおありがどごあんすた。」 一同退場 医師これを見送る。 (幕)
「植物医師 郷土喜劇」宮沢賢治(青空文庫)
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