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食堂(森鴎外)のあらすじ・登場人物

昼の食堂で語られる無政府主義

  • 社会

森鴎外 1910年(明治43年)12月 「三田文学」

文字数
6,158字
読了目安
約12分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

『三田文学』1910年12月号に掲載。役所の食堂で昼の弁当を使う官吏たちの会話だけで進む短編。無政府主義者の検挙の報道を受け、無政府主義と虚無主義の語の由来や、思想家たちの経歴が語られる。1910年の大逆事件の報道を背景に、前月の『沈黙の塔』と並んで、当時の言論状況への鷗外の関心を示す作品とされる。木村は『あそび』にも登場する。

あらすじ

役所の食堂の昼、官吏の木村は、長い卓の端で弁当を使う。向かいの犬塚が「とうとう恐ろしい連中の事が発表になっちまったね」と言い、隣の山田が驚く。話題は無政府主義者の事件になり、犬塚はパリのアンリの弁明を引き、あの連中は何にでも爆弾を投げるのだと言う。山田が無政府主義の来歴を尋ねると、木村はしぶしぶ、無政府主義の語をプルードンが使い、虚無主義の語はツルゲーネフの小説に由来すること、シュティルナー、プルードン、バクーニン、クロポトキンらの経歴を、簡潔に説明する。木村は、文学の歴史を通して世間を見ているのだと言い、言論の自由を大事に思うので、発売禁止が広く行われることを歎かわしく思うと述べる。犬塚は冷かしながらも、死刑を望む者に監獄で長生きさせる案を冗談にする。やがて木村が、死刑になった数人の名を挙げ、盛んに主義の宣伝に使われているようだと言い添えると、三人は席を起つ。

登場人物

冒頭部(原文より)

木村は役所の食堂に出た。 雨漏りの痕が怪しげな形を茶褐色に画いている紙張の天井、濃淡のある鼠色に汚れた白壁、廊下から覗かれる処だけ紙を張った硝子窓、性の知れない不潔物が木理に染み込んで、乾いた時は灰色、濡れた時は薄墨色に見える床板。こう云う体裁の広間である。

「食堂」森鴎外(青空文庫)

末尾部(原文より)

「どれ」と云って、犬塚が紙巻の燃えさしを灰吹の中に投げたのを合図に、三人は席を起った。 外を片付けてしまって待っていた、まかないの男が、三人の前にあった茶碗や灰吹を除けて、水をだぶだぶ含ませた雑巾で、卓の上を撫で始めた。

「食堂」森鴎外(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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