醜聞(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
醜聞に正面から向きあう勇気
- 歴史
- 心理
- 文字数
- 22,906字
- 読了目安
- 約46分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
山本周五郎が1964年(昭和39年)、「小説新潮」に発表した時代小説。ある「醜聞」の処置をめぐって、功刀功兵衛は思い悩む。体面を守るために問題を闇に葬るのと、人間として正面から対決するのと、どちらが正しく勇気のいることか——真の裁きとは何かを問う、思索的な一編である。
あらすじ
苅田壮平は、なめらかに話した。それはちょうど、絵師が得意な絵を、いささかのためらいもなく描きあげていくようだった。それを聞く功刀功兵衛は、「楯岡のときと同じだな」と思う。ある「醜聞」の処置をめぐって、功兵衛は苅田から、ある依頼を持ちかけられる。「私にはできません、それは不可能だというほかはありません」と、功兵衛はかすかに首を振る。武家の家名や体面を汚しかねない問題——それを恐れて闇に葬ろうとするのと、人間として正面から対決するのと、どちらが正しく勇気のいることだろうか。功兵衛は、寝てからも長いこと自分の過去を思い返す。「おれはそんなにもつめたく、形式ばった人間だったのだろうか」。そして彼は、ある決心にいたる。「苅田壮平のためになにかしよう、罰するだけが裁きではないからな、明日は靱町へいって相談しよう」。厳しい越川中老の毒舌を空想のなかで思い浮かべながらも、功兵衛はそっと微笑むのだった。真の裁きと、人間らしい勇気とは何かを問う、山本晩年の思索的な一編である。
登場人物
- 功刀功兵衛 醜聞の処置に悩む侍
- 苅田壮平 功兵衛に依頼を持ちかける男
冒頭部(原文より)
苅田壮平はなめらかに話した。それはちょうど、絵師が自分の得意な絵を描くのに似ていた。どの線もどの点も、またぼかしの部分や着彩の順にも、いささかの誤りもためらいもなく、すらすらと描きあげてゆくのを見るようであった。
「醜聞」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
醜聞のひろまることを恐れて、ただ問題を闇に葬ろうとするのと、人間としてその問題に正面から対決するのと、どちらが正しく勇気のいることだろうか。 「苅田壮平のためになにかしよう」と功兵衛は呟いた、「罰するだけが裁きではないからな、明日は靱町へいって相談しよう」
「醜聞」山本周五郎(青空文庫)
原文を読む
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