旅なかま(アンデルセン)のあらすじ・登場人物
魔法の姫に挑む旅
- 幻想
- 翻訳
- 文字数
- 23,627字
- 読了目安
- 約47分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
アンデルセンが1835年12月に発表した童話(原題 Reisekammeraten)を、児童文学者の楠山正雄が訳したもの。父を亡くした貧しい青年ヨハンネスが、あてのない旅の途中で出会った賢い道づれと歩き、美しいが恐ろしい姫に求婚するまでを描く。死んだ父の面影、教会の夜の出来事、不思議な膏薬、魔法つかいの山の宴と、民話の趣のある場面が連なり、人の善意が思わぬかたちで報われる筋が軸になっている。比較的長い作品で、信仰心の厚い素朴な主人公と、世慣れた道づれの対比も味わいどころ。
あらすじ
父を亡くして独りになった青年ヨハンネスは、わずかな財産の五十ターレルを持って旅に出る。ある晩、古い教会で眠っていると、悪者二人が借金のかたに死人を棺から放り出そうとしているのを見て、全財産を渡して死人を守る。森で出会った賢い旅なかまと道づれになり、旅なかまは足をくじいた老婆を膏薬で治して三本のむちを受け取り、犬に噛まれた人形芝居の人形を治して剣をもらい、落ちてきた白鳥の翼を切りとる。二人は大きな町に着く。そこの姫は絶世の美女だが、結婚を申し込む者に自分の心の中の三つの考えを当てさせ、外れれば首を斬らせる魔法つかいで、庭には求婚者の骸骨が下がっていた。ヨハンネスは、亡き父の夢で見た姫に生き写しの姫に心を奪われ、挑戦を決める。旅なかまは翼とむちを使い、毎晩山の魔法つかいのもとへ飛ぶ姫の後を追ってむちで打ち、姫が考えることを盗み聞いてヨハンネスに教える。ヨハンネスは靴、手袋を言い当て、三日目の朝、旅なかまが夜のうちに切り落とした魔法つかいの首を包みから出して見せて、三度目も当てる。魔法の解けた姫と結婚したヨハンネスのもとへ、旅なかまは別れを告げに来て、自分こそ教会の夜に救われた死人だと明かして姿を消す。ヨハンネスは姫とともに国を治める。
冒頭部(原文より)
かわいそうなヨハンネスは、おとうさんがひどくわずらって、きょうあすも知れないほどでしたから、もうかなしみのなかにしずみきっていました。せまいへやのなかには、ふたりのほかに人もいません。テーブルの上のランプは、いまにも消えそうにまばたきしていて、よるももうだいぶふけていました。 「ヨハンネスや、おまえはいいむすこだった。」と、病人のおとうさんはいいました。「だから、世の中へでても、神さまがきっと、なにかをよくしてくださるよ。」 そういって、やさしい目でじっとみながら、ふかいため息をひとつつくと、それなり息をひきとりました。それはまるでねむっているようでした。でも、ヨハンネスは泣かずにいられません、この子はもう、この世の中に、父親もなければ、母親もないし、男のきょうだいも、女のきょうだいもないのです。かわいそうなヨハンネス。ヨハンネスは、寝台のまえにひざをついて、死んだおとうさんの手にほおずりして、しょっぱい涙をとめどなくながしていました。そのうち、いつか目がくっついて、寝台のかたい脚にあたまをおしつけたなり、ぐっすり寝こんでしまいました。
「旅なかま」アンデルセン(青空文庫)
末尾部(原文より)
「いいや、いいや、わたしのかえっていく時が来たのだ。わたしはほんの借をかえしただけだ。きみはおぼえていますか、いつか、わるものどものためにひどいはずかしめを受けようとした死人のことを。あのとききみは、持っていたもののこらず、わるものどもにやって、その死人をしずかに墓のなかに休ませてくれましたね。その死人が、わたしなのですよ。」 こういうがはやいか、旅なかまの姿は消えました。 さて、ご婚礼のおいわいは、まるひと月もつづきました。ヨハンネスと王女とは、もうおたがいに、心のそこから好きあっていました。老王さまは、もう毎日、たのしい日を送っておいでになりました。かわいらしいお孫さんたちを、かわるがわるおひざの上にのせて、かってにはねまわらせたり、しゃくをおもちゃにしてあそばせたりなさいました。ヨハンネスはかわりに、王さまになって、王国のこらずおさめることになりました。
「旅なかま」アンデルセン(青空文庫)
原文を読む
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