大礼服の例外的効果(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
卒業式の朝、校旗を持つ生徒
- 社会
- 心理
- 文字数
- 1,048字
- 読了目安
- 約2分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
雪の朝の卒業式を前にした控室で、大礼服の校長が、校旗を持つ旗手の生徒と向き合う短い場面を描く断章。旗手の富沢は数週間前に連名で宣言めいた文書を貼り出した一人で、校長は式場で彼が何をするのか見当がつかず、手がふるえる。見る者と見られる者の立場が入れ替わっていくような、静かな緊張が一場面に凝縮されている。新字旧仮名。
あらすじ
雪の卒業式の朝、大礼服を着た校長は、二階の式場の音を聞きながら控室で待っている。扉が叩かれ、新しい白手袋の旗手と、三人の級長が入ってくる。校長は雪の反射の中で旗手の顔を見て、それが数週間前、掲示場に貼り出された、「われらはわれらの信ぜざることをなさず」といった宣言の連名者の最後に記された富沢だと気づく。その後の調査で校長はひどく頭を悩ませたが、富沢はいま驚くほどまじめな様子で、式場で校旗を投げ出して叫ぶつもりなのか、本当に旗を守るつもりなのか、見当がつかない。校長は目を合わされてきまり悪くそらし、手袋をかける手がふるえる。徳育会で、もっとごまかしのない国体の意義を知りたいと言った富沢の言葉も思い出される。卒業の証書も生活の保証も命も要らないという、この若者の美しさと扱いにくさ。教授が校旗を迎えに来て、校長は声に出して「よし」と言うが、体がふるえる。その大礼服の金彩が雪の光の中でちらちら震えるのを、旗を持つ富沢は、この人はこの正直さで立身してきたのだと恍惚として見つめている。
登場人物
- 校長 大礼服を着た学校長
- 富沢 校旗を持つ旗手の生徒。宣言の連名者
- 三人の級長・教授 校長を迎えに来る人々
冒頭部(原文より)
こつこつと扉を叩いたのでさっきから大礼服を着て二階の式場で学生たちの入ったり整列したりする音を聞きながらストウヴの近くできうくつに待ってゐた校長は 低く よし と答へた。
「大礼服の例外的効果」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
校長の大礼服のこまやかな金彩は明るい雪の反射のなかでちらちらちらちら顫へた。何といふこの美しさだ。この人はこの正直さでこゝまで立身したのだ と富沢は思ひながら恍惚として旗をもったまゝ校長を見てゐた。
「大礼服の例外的効果」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。