タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
噛んだ藤蔓の一日
- 幻想
- 文字数
- 4,948字
- 読了目安
- 約10分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
宮沢賢治の童話。ホロタイタネリという少年が、仕事のはずの藤蔓を噛みながら春の野原へ飛び出し、柏の木や蟇、やどりぎ、鴇と出会っては、ひとりで歌い、おびえ、さびしがる。歌のくり返しと自然の描写が多く、題名も本文の終わりの少年の言葉からとられている。
あらすじ
ホロタイタネリは、小屋の出口で凍らせて裂いた藤蔓を叩いていたが、野原があまりに明るいので、蔓を噛みながら駆け出す。母には「森には入るな、白樺の皮を剥いで来い」と言われていた。柏の木に遊ぼうと話しかけても返事はなく、湿地では蟇のつぶやきが聞こえて怖くなって逃げる。やどりぎのついた栗の木に節をつけてはやし、大きな白い鳥を追って谷から暗い森の前まで行くが、中から怒鳴り声がし、犬神のようなものが立っているのを見て逃げ帰る。日が傾くころ家に着くと、白樺の皮も藤蔓もなくしており、母に叱られるが、「一日噛んでいたようだった」と言うと、母はその顔つきを見て安心する。
登場人物
- タネリ ホロタイタネリ。藤蔓を噛みながら野原を駆ける少年
- タネリの母 白樺の皮や藤蔓の仕事を言いつける
冒頭部(原文より)
ホロタイタネリは、小屋の出口で、でまかせのうたをうたいながら、何か細かくむしったものを、ばたばたばたばた、棒で叩いて居りました。 「山のうえから、青い藤蔓とってきた …西風ゴスケに北風カスケ… 崖のうえから、赤い藤蔓とってきた …西風ゴスケに北風カスケ… 森のなかから、白い藤蔓とってきた …西風ゴスケに北風カスケ… 洞のなかから、黒い藤蔓とってきた
「タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「仕事に藤蔓噛みに行って、無くしてくるものあるんだか。今年はおいら、おまえのきものは、一つも編んでやらないぞ。」お母さんが少し怒って云いました。 「うん。けれどもおいら、一日噛んでいたようだったよ。」 タネリが、ぼんやりまた云いました。 「そうか。そんだらいい。」お母さんは、タネリの顔付きを見て、安心したように、またこならの実を搗きはじめました。
「タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった」宮沢賢治(青空文庫)
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