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手紙 一(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物

毒の竜が耐えたいのち

  • 幻想

宮沢賢治 

文字数
1,085字
読了目安
約2分
表記
新字新仮名

この作品について

宮沢賢治が残した「手紙」と題する四編の連作の一つ。仏教の本生譚(前世の物語)のように、むかしむかし、毒をもつ強大な竜が、悪いことはしないと誓ったあと、猟師に皮をはがれても耐え、虫に身を与えて死ぬ。竜はのちにお釈迦さまとして生まれたと語られる。千字ほどの短い話に、賢治が深く信じた法華経の自己犠牲の精神が凝縮されている。

あらすじ

むかし、あるところに強い力と恐ろしい毒をもつ竜が住んでいた。この竜はあるとき、これからは悪いことをせず、すべてのものを悩ませないと誓い、静かな林に入って道理を考えるうちに疲れて眠った。竜は眠ると蛇の形になり、体には瑠璃色や金色の紋があらわれる。そこへ猟師たちが来て、きれいな皮を王様に差し上げようと、杖で頭を押さえ、刀で皮をはぎはじめる。竜は目を覚まし、息ひとつで猟師を毒で殺せると思うが、さきほどの誓いを思い出し、息をこらして痛みに耐え、悔しいという心さえ起こさない。皮をはがれた竜は日に焼かれて苦しみ、水のあるところへ這おうとするが、小さな虫が体を食べにくる。竜は、この体を虫にやることがまことの道のためで、いつかこの虫らにまことの道を教えられると考え、虫に体を食わせて乾いて死ぬ。竜は天上に生まれ、のちにお釈迦さまとなって人々に幸せを与え、このときの虫も教えを受けてまことの道に入った。語り手は、このはなしはおとぎばなしではない、と結ぶ。

登場人物

冒頭部(原文より)

むかし、あるところに一疋の竜がすんでいました。 力が非常に強く、かたちも大層恐ろしく、それにはげしい毒をもっていましたので、あらゆるいきものがこの竜に遭えば、弱いものは目に見ただけで気を失って倒れ、強いものでもその毒気にあたってまもなく死んでしまうほどでした。この竜はあるとき、よいこころを起して、これからはもう悪いことをしない、すべてのものをなやまさないと誓いました。 そして静かなところを、求めて林の中に入ってじっと道理を考えていましたがとうとうつかれてねむりました。

「手紙 一」宮沢賢治(青空文庫)

末尾部(原文より)

このようにしてお釈迦さまがまことのために身をすてた場所はいまは世界中のあらゆるところをみたしました。 このはなしはおとぎばなしではありません。

「手紙 一」宮沢賢治(青空文庫)

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