取舵(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
盲目の翁が握る舵
- 冒険
- 心理
- 文字数
- 7,439字
- 読了目安
- 約15分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 富山県
- 新潟県
この作品について
1895年(明治28年)1月、総合雑誌『太陽』創刊号に、尾崎紅葉の署名で掲載され、後に泉鏡花の作と明らかになった作品(図書カードによる)。伏木港から直江津へ向かう汽船観音丸の船上で、手引きのいない七十八歳の盲目の老人をめぐる出来事を、硬い文語体で描く。船上の会話と、荒れる海での危機が見どころである。
あらすじ
九月二日、伏木港を出る観音丸に、手引きもない七十八歳の盲目の翁が乗り込む。船室は米俵で蒸し暑くなり、船酔いの婦人たちは翁の頼みに耳を貸さない。親切な学生が翁を甲板へ連れ出し、友人と談笑する。学生は、去年の夏に八田潟で乗った渡し舟の船頭が、盲目ながら見事に櫓を操った話を語る。船は荒れる空の下を進み、夕方には直江津にたどり着く。ところが、乗客を移す艀が風浪に巻き込まれ、八人の船子が危うくなる。そのとき、学生の隣にいた盲翁が立ち上がり、「取舵だい」と叫んで艪を奪い、見事に艀を救う。翁はかつて銭屋五兵衛の海軍で名を馳せた磁石の又五郎であった。
登場人物
- 盲目の翁 七十八歳。善光寺参りの途中
- 学生 翁を親切に世話する青年
- 学生の友人 冗談好きの連れ
- 船子 艀を漕ぐ八人の男たち
冒頭部(原文より)
「こりゃどうも厄介だねえ。」 観音丸の船員は累々しき盲翁の手を執りて、艀より本船に扶乗する時、かくは呟きぬ。
「取舵」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
一艘の厄介船と、八人の厄介船頭と、二十余人の厄介客とは、この一個の厄介物の手に因りて扶けられつつ、半時間の後その命を拾いしなり。この老いて盲なる活大権現は何者ぞ。渠はその壮時において加賀の銭屋内閣が海軍の雄将として、北海の全権を掌握したりし磁石の又五郎なりけり。
「取舵」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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