図書館幻想(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
十階の灰色の広間で
- 幻想
- 文字数
- 497字
- 読了目安
- 約1分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
幻想的な図書館の一室を舞台にした、賢治の短い散文作品。十階の広間に冷たい灰色の人物「ダルゲ」を訪ねる語り手と、そこで交わされる奇妙な言葉が描かれる。詩のような文体のなかに、賢治の鉱物学・地質学への関心と孤独感が滲む。草稿のまま残された断章で、
あらすじ
「おれ」はようやく図書館の十階に着いて汗を拭う。天井は途方もなく高く、壁が灰色の陰影なのか冷たい漆喰なのか分からない。この巨きな室に「ダルゲ」がいる、今度こそ会えるのだと思い、胸のどこかが熱くなったか溶けたかのような気がする。高さ二丈ほどの扉が半分開いていて、おれはするりと入る。室はがらんとして冷たく、背の低いダルゲが手を額にかざして大きな窓から西の空を見つめている。ダルゲは灰色で、腰には硝子の蓑を厚くまとっている。窓の向こうには縮れた雲が痛々しく光る。ダルゲがふいに澄んだ声で、西空の縮れた羊から崇敬が照り返される、と歌い出す。堪えかねたおれは「白堊系の砂岩の斜層理について」と叫び、ダルゲは振り向いて冷やかに笑う。
冒頭部(原文より)
おれはやっとのことで十階の床をふんで汗を拭った。 そこの天井は途方もなく高かった。全體その天井や壁が灰色の陰影だけで出來てゐるのか、つめたい漆喰で固めあげられてゐるのかわからなかった。 (さうだ。この巨きな室にダルゲが居るんだ。今度こそ會へるんだ。)とおれは考へて一寸胸のどこかが熱くなったか熔けたかのやうな氣がした。
「図書館幻想」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
おれの崇敬は照り返され。 おれは空の向ふにある氷河の棒をおもってゐた。 ダルゲは又じっと額に手をかざしたまま動かなかった。 おれは堪へかねて一足そっちへ進んで叫んだ。 「白堊系の砂岩の斜層理について。」 ダルゲは振り向いて冷やかにわらった。
「図書館幻想」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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