妻に失恋した男(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
妻に失恋して死んだ男
- ミステリ
- 文字数
- 5,695字
- 読了目安
- 約11分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
江戸川乱歩が1957年(昭和32年)、「産業経済新聞」に連載した短編。世田谷の刑事「わたし」が語る、奇妙な自殺——自分の妻に「失恋」して死んだ男の話。冷たい妻への一途な恋に絶望して命を絶ったと見えた事件の周辺を描く、乱歩晩年のミステリである。
あらすじ
「わたし」は、そのころ世田谷警察署の刑事だった。管内で自殺したのは、南田収一という三十八歳の男。妙な話だが、この男は「自分の妻に失恋して」自殺したのだ、と噂された。南田は生前、友人に胸のうちを打ち明けていた。妻のみや子にほれてほれ抜いているのに、彼女は自分を少しも愛してくれない。何を言っても逆らわず、言うことは何でもきくが、それはうわべだけの作りもので、心の底では真から嫌われている——仲人結婚がお互いの不幸のもとになったのだ、と。妻への一途な恋に絶望した末の自殺、と見えたこの事件だが、真相はまったく違っていた。それは、冷たい妻・みや子と、その恋人である歯科医・琴浦とが、周到に仕組んだ殺人だったのだ。裏口が目と鼻の先で向かい合う南田家と歯科医院、あらかじめ渡されていたピストル、合鍵の鋳造、頭蓋骨を貫いた弾丸のあとの偽装——冷静に組み立てられた計画によって、殺人は「失恋の果ての自殺」に見せかけられていた。「失恋」という切ない言葉の裏に、冷酷な犯罪を隠した、乱歩晩年のミステリである。
登場人物
- 南田収一 妻に失恋して自殺したと見える男
- みや子 南田の冷たい妻
- 琴浦 みや子の恋人の歯科医
冒頭部(原文より)
わたしはそのころ世田谷警察署の刑事でした。自殺したのは管内のS町に住む南田収一という三十八才の男です。妙な話ですが、この南田という男は自分の妻に失恋して自殺したのです。
「妻に失恋した男」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
琴浦とみや子は、治療室の死体を、夜にまぎれて、裏口から南田家の書斎へ運び、指紋をふきとったピストルを、死体の手に握らせ、別の鍵でドアをしめました。カギはほんとうに一つしかなかったのですが、歯科医ですから、みや子に型をとらせて、合カギを鋳造するぐらい、わけのないことでした。
「妻に失恋した男」江戸川乱歩(青空文庫)
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