つゆのあとさき(永井荷風)のあらすじ・登場人物
銀座の女給のしたたかな日々
- 心理
- 社会
- 文字数
- 74,737字
- 読了目安
- 約2時間29分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
永井荷風の代表作の一つ。1931年(昭和6)10月、『中央公論』に発表された。震災後に近代化した銀座のカフェーを舞台に、多くの男たちと関わりながら、あっけらかんと自堕落に生きる女給・君江を主人公に据える。彼女をめぐる男たちの思惑と、それに動じない君江の姿を、荷風は突き放した皮肉な視線で描く。移りゆく都市風俗を活写した、荷風の花柳・風俗小説の到達点とされる一編である。
あらすじ
銀座のカフェーに勤める女給の君江は、器量よしで男好きのする女だが、貞操の観念にはまるで無頓着で、次から次へと言い寄る客や情人たちと、屈託なく関係を結んでは移ろっていく。かつて彼女を妾として囲っていた文士の清岡進は、そんな君江の奔放な生き方が我慢ならず、また自分を袖にされた恨みも手伝って、ひそかに彼女への復讐を思い立つ。清岡は人を使って君江の身なりや持ち物をこっそり傷つけさせ、匿名の脅迫めいた仕打ちで彼女を不安に陥れようとする。だが、当の君江はといえば、次々と降りかかる気味の悪い出来事に一時は怯えるものの、根が楽天的でしたたかな彼女は、深く思い悩むこともなく、相変わらず男たちと戯れながら日々を過ごしていく。復讐は空回りし、陰湿に立ち回る男たちのほうがかえって滑稽に見えてくる。荷風は、モダン都市東京の享楽的な風俗と、そこに生きる男女の生態を、道徳の物差しを外した醒めた眼で活写してみせるのだった。
登場人物
- 君江 銀座のカフェーに勤める奔放な女給。貞操に無頓着で、多くの男と関わりながらしたたかに生きる本作の主人公
- 清岡進 かつて君江を囲っていた文士。彼女の生き方に腹を立て、陰湿な復讐を企てる
冒頭部(原文より)
女給の君江は午後三時からその日は銀座通のカッフェーへ出ればよいので、市ヶ谷本村町の貸間からぶらぶら堀端を歩み見附外から乗った乗合自動車を日比谷で下りた。そして鉄道線路のガードを前にして、場末の町へでも行ったような飲食店の旗ばかりが目につく横町へ曲り、貸事務所の硝子窓に周易判断金亀堂という金文字を掲げた売卜者をたずねた。
「つゆのあとさき」永井荷風(青空文庫)
末尾部(原文より)
君江は飛起きながら「おばさんおばさん。」と夢中で呼びつづけた。
「つゆのあとさき」永井荷風(青空文庫)
原文を読む
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