チュウリップの幻術(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
白い花が呼ぶ光の酒
- 幻想
- 文字数
- 5,774字
- 読了目安
- 約12分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
宮沢賢治の童話。五月の農園に来た洋傘直しが、園丁の頼みで鋏や剃刀を研ぎ、礼に主人の花を見せてもらう。小さな白いチューリップを見つめるうち、二人は「光の酒」に酔い、果樹が踊り出す幻を見る。ほとんど会話だけで進み、光と色の言葉で春の畑をまぶしく描いた幻想童話である。
あらすじ
すももの垣根に青白い花が咲く五月の農園に、洋傘直しがやって来る。園丁の頼みで剪定鋏や剃刀を研ぎ、代金を受け取る段になって、園丁は礼にと自分の育てたチューリップを見せる。いちばん大切だという小さな白い花を見つめるうち、二人の目にはその盃から光が湧き出し、空じゅうに満ちる様子が見えてくる。二人は「チュウリップの光の酒」を酌み交わし、唐檜やすももや梨の木が踊り出す幻を眺めるが、やがて木々は引っかき合いの騒ぎになり、酒に火がついて畑も空も煙に包まれる。我に返った洋傘直しは、幻術にかかっていたのだと言って荷物を担ぎ、挨拶してそそくさと去る。園丁は青ざめた顔でそれを見送り、唐檜の茂みへ戻っていく。
登場人物
- 洋傘直し 荷を負ってやって来る旅の職人
- 園丁 チューリップを育てる若い庭師
冒頭部(原文より)
この農園のすもものかきねはいっぱいに青じろい花をつけています。 雲は光って立派な玉髄の置物です。四方の空を繞ります。 すもものかきねのはずれから一人の洋傘直しが荷物をしょって、この月光をちりばめた緑の障壁に沿ってやって来ます。 てくてくあるいてくるその黒い細い脚はたしかに鹿に肖ています。そして日が照っているために荷物の上にかざされた赤白だんだらの小さな洋傘は有平糖でできてるように思われます。
「チュウリップの幻術」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
洋傘直しは荷物へよろよろ歩いて行き、有平糖の広告つきのその荷物を肩にし、もう一度あのあやしい花をちらっと見てそれからすももの垣根の入口にまっすぐに歩いて行きます。 園丁は何だか顔が青ざめてしばらくそれを見送りやがて唐檜の中へはいります。 太陽はいつかまた雲の間にはいり太い白い光の棒の幾条を山と野原とに落します。
「チュウリップの幻術」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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