海に生くる人々(葉山嘉樹)のあらすじ・登場人物
荒海の船底から、団結は生まれる
- 社会
- 心理
- 文字数
- 161,297字
- 読了目安
- 約5時間23分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 北海道
- 神奈川県
この作品について
1926年(大正15年)に刊行された葉山嘉樹の長編小説で、日本のプロレタリア文学を代表する一作。石炭を満載して室蘭から横浜へ向かう汽船・万寿丸を舞台に、極寒の北海航路で酷使される火夫や水夫たちが、非人間的な労働と船内の身分秩序のなかに置かれる。船員としての実体験に裏打ちされた迫真の描写と、荒れる海そのものを登場人物のように書きこむ筆致で、観念に流れがちだった当時の労働文学に確かな肉体を与えた。
あらすじ
厳冬の室蘭港。汽船万寿丸は腹に三千トンの石炭を詰めこみ、横に降りまくる風雪のなかを横浜へ向けて出港する。デッキまで沈んだ船体を太平洋の怒濤にさらしながらの、危険きわまりない冬の北海航路である。船底の火夫室では、若い火夫たちが焼けつくような釜前で石炭をくべ続けている。石炭の粉と汗にまみれ、粗末な食事と狭い寝床をあてがわれ、事故で傷つき、病んで倒れても顧みられない。一方、上甲板の船長や機関長は暖かい部屋で酒を飲み、船会社の利益だけを守っている。この歴然たる差に、若い船員たちの憤りは日ごとに積もっていく。やがて一人の死をきっかけに、彼らは待遇改善を求めて要求書を突きつけ、船内での組織づくりに乗り出す。密告があり、切り崩しがあり、権力の圧迫がある。それでも一度めざめた者たちは後戻りしない。船が港に着いたとき、指導者たちは捕えられ、鉄格子の向こうへ送られた。冷たい風の吹き込む留置場で、彼らは刑の決定を待っている。
登場人物
- 万寿丸の火夫・水夫たち 極寒の航路で酷使され、やがて団結して立ち上がる若い船員たち
- 船長・機関長 会社の利益を守り、船員を人として扱わない上級船員
冒頭部(原文より)
一 室蘭港が奥深く入り込んだ、その太平洋への湾口に、大黒島が栓をしている。雪は、北海道の全土をおおうて地面から、雲までの厚さで横に降りまくった。 汽船万寿丸は、その腹の中へ三千トンの石炭を詰め込んで、風雪の中を横浜へと進んだ。船は今大黒島をかわろうとしている。その島のかなたには大きな浪が打っている。
「海に生くる人々」葉山嘉樹(青空文庫)
末尾部(原文より)
食事窓や、のぞき窓や、その他のすき間からは、剃刀の刃のような冷たい風がシュッシュッと吹き込んだ。 彼らは、そこで刑の決定されるのを待った。 ――終――
「海に生くる人々」葉山嘉樹(青空文庫)
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