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運命論者(国木田独歩)のあらすじ・登場人物

逃れられぬ宿命を語る青年

  • 心理

国木田独歩 1903年(明治36年)3月 「山比古」

文字数
17,357字
読了目安
約35分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 神奈川県

この作品について

国木田独歩が1903年(明治36年)、雑誌「山比古」に発表した短編小説。晩秋の鎌倉の海辺で「自分」が出会った一人の青年紳士――彼は自らを「運命論者」と称し、人は決して運命の力から逃れることはできないと語る。その確信の裏には、彼自身が背負った、あまりにも数奇で悲劇的な身の上があった。血と因縁にまつわる逃れがたい宿命を、独歩が緊張感をもって描いた、思索的な一編である。

あらすじ

晩秋の鎌倉、人影もまばらな海辺の砂山で、「自分」は日向ぼっこをしながら書物を読む一人の青年紳士と出会い、言葉をかわすようになる。物静かで品のよいその男は、自らを「運命論者」だと言う。人は運命の力に操られる存在であり、いかなる人の力をもってしても、過去に起こった事実を消すことはできない――そう確信するに至った背景には、彼自身の恐るべき身の上があった。彼は、実の母が、じつは父の仇であるという事実を知ってしまう。そして、心から愛して妻とした女性が、血のつながった実の妹であったことをも知る。生みの母を憎むことも、妹を妻として愛する心を消すことも、彼にはできない。過去の事実は、もはや人の力ではどうにもならないのだ。「だから運命です」と静かに言い、彼は淋しい砂山の頂に立って、はるかな沖を眺めるのだった。「自分」はこの不幸な青年と握手して別れ、その後、二度と彼に会うことはなかった。血と因縁にまつわる宿命の重さを、独歩が緊張感をもって描いた思索的な一編である。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  秋の中過、冬近くなると何れの海浜を問ず、大方は淋れて来る、鎌倉も其通りで、自分のように年中住んで居る者の外は、浜へ出て見ても、里の子、浦の子、地曳網の男、或は浜づたいに往通う行商を見るばかり、都人士らしい者の姿を見るのは稀なのである。

「運命論者」国木田独歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

「だから運命です。離婚した処で生の母が父の仇である事実は消ません。離婚した処で妹を妻として愛する僕の愛は変りません。人の力を以て過去の事実を消すことの出来ない限り、人は到底運命の力より脱るゝことは出来ないでしょう。」  自分は握手して、黙礼して、此不幸なる青年紳士と別れた、日は既に落ちて余光華かに夕の雲を染め、顧れば我運命論者は淋しき砂山の頂に立って沖を遙に眺て居た。  其後自分は此男に遇ないのである。

「運命論者」国木田独歩(青空文庫)

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