牛をつないだ椿の木(新美南吉)のあらすじ・登場人物
椿の木に牛をつなぐ人力車夫
- 心理
- 文字数
- 9,096字
- 読了目安
- 約18分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
新美南吉が没した1943年(昭和18年)、雑誌「少國民文化」に発表された童話。人力車夫の海蔵さんが、道ゆく人々ののどをうるおすため、椿の木のかたわらに井戸を掘ろうと志す。損得を超えた、人のための無償の行いというものを、南吉が澄んだ筆致でうたいあげた一編である。
あらすじ
山の中の道のかたわらに、一本の椿の若木があった。牛曳きの利助さんはそこに牛をつなぎ、人力車夫の海蔵さんも根本に車をおいて休むのが常だった。ある暑い日、坂道を上ってきて、のどがからからに渇いた海蔵さんは、近くに清水がないことを恨めしく思う。もしこの椿の木のそばに井戸があったら、どれだけ多くの旅人がのどをうるおして助かるだろう――そう考えた海蔵さんは、自分の力で井戸を掘ろうと志を立てる。人に笑われ、金もかかる仕事だったが、海蔵さんはこつこつと働いて金をため、土地の持ち主に掛け合い、少しずつ井戸掘りの準備を進めていく。損得を超えたその願いに、はじめは冷ややかだった村の人々も、やがて心を動かされていく。ところが、井戸の完成を見ぬうちに、日本とロシヤの戦争が始まり、海蔵さんは兵士として海を渡り、日露戦争の花と散ってしまう。しかし、海蔵さんの遺した願いは死ななかった。椿の木かげには今も清水がこんこんと湧き、道に疲れた人々はそこでのどをうるおし、元気を取りもどして、また道を進んでゆくのである。損得を超えた人の真心のとうとさを、南吉が澄んだ筆致でうたいあげた一編である。
登場人物
- 海蔵さん 人力車夫。道ゆく人々ののどをうるおすため、椿の木のかたわらに井戸を掘ろうと志すが、井戸の完成を見ずに日露戦争へ出征して散る
- 利助さん 牛曳き。椿の若木に牛をつなぐ、海蔵さんの仲間
冒頭部(原文より)
山の中の道のかたわらに、椿の若木がありました。牛曳きの利助さんは、それに牛をつなぎました。 人力曳きの海蔵さんも、椿の根本へ人力車をおきました。人力車は牛ではないから、つないでおかなくってもよかったのです。
「牛をつないだ椿の木」新美南吉(青空文庫)
末尾部(原文より)
日本とロシヤが、海の向こうでたたかいをはじめていました。海蔵さんは海をわたって、そのたたかいの中にはいって行くのでありました。 ついに海蔵さんは、帰って来ませんでした。勇ましく日露戦争の花と散ったのです。しかし、海蔵さんのしのこした仕事は、いまでも生きています。椿の木かげに清水はいまもこんこんと湧き、道につかれた人々は、のどをうるおして元気をとりもどし、また道をすすんで行くのであります。
「牛をつないだ椿の木」新美南吉(青空文庫)
原文を読む
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