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牛をつないだ椿の木(新美南吉)のあらすじ・登場人物

椿の木に牛をつなぐ人力車夫

  • 心理

新美南吉 1943年(昭和18年)6月 「少國民文化」

文字数
9,096字
読了目安
約18分
表記
新字新仮名

この作品について

新美南吉が没した1943年(昭和18年)、雑誌「少國民文化」に発表された童話。人力車夫の海蔵さんが、道ゆく人々ののどをうるおすため、椿の木のかたわらに井戸を掘ろうと志す。損得を超えた、人のための無償の行いというものを、南吉が澄んだ筆致でうたいあげた一編である。

あらすじ

山の中の道のかたわらに、一本の椿の若木があった。牛曳きの利助さんはそこに牛をつなぎ、人力車夫の海蔵さんも根本に車をおいて休むのが常だった。ある暑い日、坂道を上ってきて、のどがからからに渇いた海蔵さんは、近くに清水がないことを恨めしく思う。もしこの椿の木のそばに井戸があったら、どれだけ多くの旅人がのどをうるおして助かるだろう――そう考えた海蔵さんは、自分の力で井戸を掘ろうと志を立てる。人に笑われ、金もかかる仕事だったが、海蔵さんはこつこつと働いて金をため、土地の持ち主に掛け合い、少しずつ井戸掘りの準備を進めていく。損得を超えたその願いに、はじめは冷ややかだった村の人々も、やがて心を動かされていく。ところが、井戸の完成を見ぬうちに、日本とロシヤの戦争が始まり、海蔵さんは兵士として海を渡り、日露戦争の花と散ってしまう。しかし、海蔵さんの遺した願いは死ななかった。椿の木かげには今も清水がこんこんと湧き、道に疲れた人々はそこでのどをうるおし、元気を取りもどして、また道を進んでゆくのである。損得を超えた人の真心のとうとさを、南吉が澄んだ筆致でうたいあげた一編である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 山の中の道のかたわらに、椿の若木がありました。牛曳きの利助さんは、それに牛をつなぎました。  人力曳きの海蔵さんも、椿の根本へ人力車をおきました。人力車は牛ではないから、つないでおかなくってもよかったのです。

「牛をつないだ椿の木」新美南吉(青空文庫)

末尾部(原文より)

 日本とロシヤが、海の向こうでたたかいをはじめていました。海蔵さんは海をわたって、そのたたかいの中にはいって行くのでありました。  ついに海蔵さんは、帰って来ませんでした。勇ましく日露戦争の花と散ったのです。しかし、海蔵さんのしのこした仕事は、いまでも生きています。椿の木かげに清水はいまもこんこんと湧き、道につかれた人々は、のどをうるおして元気をとりもどし、また道をすすんで行くのであります。

「牛をつないだ椿の木」新美南吉(青空文庫)

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