一九三一年度極東ビヂテリアン大会見聞録(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
菜食主義者たちの温泉大会
- 風刺
- 社会
- 文字数
- 3,526字
- 読了目安
- 約7分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 岩手県
この作品について
一九三一年九月、花巻温泉で開かれた「第十七回極東ビヂテリアン大会」を、居合わせた筆者が報じるという形をとった記事体の断章。菜食主義の同情派と予防派、絶対派・折衷派・大乗派といった分類の解説から入り、会場へ向かう外国人客とのやりとり、会を妨害するビラまでが書かれる。同じ賢治の「ビジテリアン大祭」を、舞台を花巻温泉に移して書き直そうとした草稿とされ、「以下原稿数枚なし」と注記された欠落が何か所もある。
あらすじ
九月四日、花巻温泉で第十七回極東ビヂテリアン大会が開かれた。筆者はその見聞を語ると断り、まず菜食主義の分類を記す。理念では、動物を哀れんで食べない同情派と、自分の病気予防のために食べない予防派。実践では、動物質を一切断つ絶対派、乳や卵はよしとする折衷派、他の動物の敵となる動物なら食べてもよいと考える大乗派がある。以下、原稿数枚が欠けた後、筆者は温泉の玄関で外国人に「タヾノオキャクサンゴザイマスカ」と片言の日本語で話しかけられる。支配人の福地第三郎から、翌日の大会のために四十人ほどが紅葉館に泊まる予定だと聞き、通知状を見せてもらう。風呂場では、さきほどの大男が時事新報を読んでおり、仏教の戒律や酒、肉についておかしな問答をする。おがせが滝の前でも再会して葉巻をもらい、大会には邪魔が入りそうだと聞く。再び欠落の後、桜小路で、シカゴ畜産組合の旗を立てた黄色い自動車が筆者にビラを投げつける。ビラには、動物を愍れんで食べない菜食主義者は人類の四分の一を餓死させる計画だと非難する文面と、動物には死のような高等な観念はないとする論が並ぶ。原稿はそこで切れる。
登場人物
- 筆者 大会を見聞する語り手
- 福地第三郎 花巻温泉の支配人
- 外国人客 筆者に何度も出会う大男
- シカゴ畜産組合の二人 ビラを撒く毛唐
冒頭部(原文より)
去る九月四日、花巻温泉で第十七回極東ビジテリアン大会が行はれた。これは世界の食糧問題に対する相当の陰謀をも含むもので昔は極めて秘密に開催されたものであるさうであるが今年は公開こそはしなかったが別にかくしもしなかったやうだ。
「一九三一年度極東ビヂテリアン大会見聞録」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
筆者は次の一枚を読んだ。 ◎偏狭非学術的なるビヂテリアンを排せ。 ビヂテリアン云ふ 動物は之を哀愍するが故に食せずと。動物が〔哀〕愍を要することいかにしてこれを別り得るや。要は人類の主観のみ。全体豚のごとき何ぞよく死のごとき高等なる観念を有せんや そはたゞ腹が空った、かぶらの茎、噛みつく、うまい、厭きた、ねむり、起きる、鼻がつまる、ぐうと鳴らす、腹がへった、麦糠、たべる、うまい、つかれたねむる、との如き一一の〔〕小き現在の連続のみ。
「一九三一年度極東ビヂテリアン大会見聞録」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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