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暗夜(樋口一葉)のあらすじ・登場人物

荒れた屋敷に住む娘

  • 心理

樋口一葉 1894年(明治27年)7月 「文学界」

文字数
19,375字
読了目安
約39分
表記
旧字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

樋口一葉が1894年(明治27)7月に『文學界』へ連載した中編。零落した名家の荒れた屋敷に独りで暮らす娘が、行き倒れの青年を助けるところから話が動き出す。娘が胸に秘めた意図が物語を引っぱり、一葉の作品の中でも暗い色調をもつ。

あらすじ

人けの絶えた荒れ屋敷・松川屋敷に、老夫婦の佐助・おそよと三人きりで住むお蘭は、投機に失敗して身を沈めた父の娘で、美しくも冷たい謎めいた娘である。ある夜、屋敷の門前で車に撥ねられ行き倒れた青年・高木直次郎を、老爺が助け入れる。名医の家に生まれながら親を早くに失い、世に爪はじきにされて心のねじけた直次郎は、看病するお蘭を女菩薩のように慕い、やがてその身に一命を捧げると誓う。だがお蘭が胸に秘めていたのは、かつて松川家を食い物にして父を自害へ追いやり、いまは羽振りのよい代議士となった旧知の男・波崎漂への復讐であった。直次郎が自分に寄せる一途な恋を知ったお蘭は、父の遺志を継ぐためにと、直次郎に波崎の暗殺を託す。事の成否は問わぬ、逃れて屋敷へ戻れと囁く彼女に、直次郎は逃げも隠れもせぬと誓って闇夜に消える。波崎の門前で襲いかかった直次郎だったが、刃は鈍って頬をかすめたのみで暗殺は未遂に終わり、下手人は知れぬまま噂も消える。三月の後、屋敷は改まって主も替わり、お蘭も直次郎も、いずこへともなく姿を消していた。

登場人物

冒頭部(原文より)

取まわしたる邸の廣さは幾ばく坪とか聞えて、閉ぢたるまゝの大門は何年ぞやの暴風雨をさながら、今にも覆へらんさま危ふく、松はなけれど瓦に生ふる草の名の、しのぶ昔しはそも誰れとか、男鹿やなくべき宮城野の秋を、いざと移したる小萩原ひとり錦をほこらん頃も、觀月のむしろに雲上の誰れそれ樣。

「暗夜」樋口一葉(青空文庫)

末尾部(原文より)

ある黨派の壯士なるべし、何々倶樂部の誰れとやら嫌疑のかゝりて其筋に引かれぬといふもあれば、終ひに何物の業とも知れで、一月の後には風説もあとなく成りぬ、疵は猶さら半月の療治に可惜男の直打も下らず、よし痕は殘るとも向ひ疵とてほこられんか可笑し、才子の君、利口の君萬々歳の喜に、又もややりそこねて身は日蔭者の、此世に有りたりとも天地廣からぬ直次郎はいかにしたる、川に沈みしか山に隱れしか、もしくは心機一轉、誠の人間になりしか、夫れ怪しきは松川屋敷の末なり、此事ありて三月ばかりの後、門は立派に敷石のこはれも直りて、日毎に植木や大工の出入しげきは主の替りしなるべし、されば佐助夫婦おらんも何處に行きける、世間は廣し、滊車は國中に通ずる頃なれば

「暗夜」樋口一葉(青空文庫)

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