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よだかの星(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物

名前まで奪われる鳥の苦しみ

  • 幻想

宮沢賢治 1934年(昭和9年)

文字数
5,197字
読了目安
約10分
表記
新字新仮名

この作品について

宮沢賢治の、生前には発表されなかった童話。よだかは、その姿をほかの鳥たちから嫌われている。鷹とは親類でもないのに、名前に「たか」が入っていることを責められ、改名して皆に披露するよう迫られる。人を傷つけた覚えのないよだかには、周囲の仕打ちが理解できない。ところが、夜空で虫を食べるうちに、自分もまたほかの命を奪って生きていることへ思いが及んでゆく。鳥たちの会話は、姿や強さによって相手を見下す人間社会の言葉にも聞こえる。一方、空を切る羽の力や山焼けの赤い光、夜明けの霧などの描写は、よだかを取り巻く世界を鮮やかに広げる。短い文章の中で、他者から受ける苦しみと、生きることそのものへの問いがつながっている。単に可哀想な鳥の話として読むだけでは収まらない、命どうしの関係を考えさせる作品。結末を急がず、その声と空の色をたどりたい。

あらすじ

よだかは、実にみにくい鳥です。顔は味噌をつけたようにまだらで、ほかの鳥たちからは嫌われ、面と向かって悪口を言われる毎日でした。あるとき鷹が現れ、鷹の名がついているのはけしからん、「市蔵」と改名して名前を披露して回れ、さもなくば掴み殺すと言い渡します。悲しみに暮れたよだかは、夜の空を飛びながら、自分の口に入る羽虫や甲虫の命を思います。生きるために多くの命を奪い、その自分もまた鷹に殺される——そのことがつらくてたまらなくなったよだかは、弟のかわせみに別れを告げ、お日さまに「あなたのところへ連れてって下さい」と頼むと、夜の星に頼むよう言われます。星々にも呼びかけますが、願いは聞き入れられません。最後の力を振り絞ったよだかは、鷹のように高く一声叫ぶと、寒さに息を凍らせながら、どこまでもどこまでもまっすぐに空へのぼっていきました。そして気がつくと、自分のからだが燐の火のような青い美しい光になって、静かに燃えているのを見ました。よだかの星は、今でもまだ燃え続けています。

登場人物

冒頭部(原文より)

よだかは、実にみにくい鳥です。  顔は、ところどころ、味噌をつけたようにまだらで、くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。  足は、まるでよぼよぼで、一間とも歩けません。  ほかの鳥は、もう、よだかの顔を見ただけでも、いやになってしまうという工合でした。

「よだかの星」宮沢賢治(青空文庫)

末尾部(原文より)

それからしばらくたってよだかははっきりまなこをひらきました。そして自分のからだがいま燐の火のような青い美しい光になって、しずかに燃えているのを見ました。  すぐとなりは、カシオピア座でした。天の川の青じろいひかりが、すぐうしろになっていました。  そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。  今でもまだ燃えています。

「よだかの星」宮沢賢治(青空文庫)

名文

よだかは、実にみにくい鳥です。

蔑まれる鳥を、ためらいなく「みにくい」と言い切って始まる童話。生きるために食べることの罪を見つめ、よだかは星になる。

そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。  今でもまだ燃えています。

作品の結び。醜いとさげすまれたよだかが、空へ昇り続けて青い星となる。今もまだ燃えているという一行が、救いと悲しみを同時に残す。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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