陽気な客(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
死んだ呑ん兵衛の話
- 心理
- 文字数
- 23,094字
- 読了目安
- 約46分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
「――仲井天青が死んだのを知ってるかい」——かすとりを飲みながら語られる、ある呑ん兵衛の一生。戦後の混乱期を舞台に、酒と借金と原稿のあいだを漂って生きた男の来歴が、聞き手に向かって一人称で延々と語られてゆく。山本周五郎には珍しい現代物で、自嘲と諧謔にくるまれた語り口の底に、生きることの苦さがひそんでいる。
あらすじ
仲井天青が死んだのを知っているかい、あの呑ん兵衛の仲井天青だぜ、きみが知らない筈はないんだがなあ——語り手はそう切り出して、酒を飲みながら思い出を語りはじめる。「七日七夜 酒を飲まず/アポロンの奏でる琴を聞かず」といった詩句をまじえながら、話は天青と過ごした日々へ遡ってゆく。……編集の仕事場では、福地総務がうつ伏しになって机に水溜りをこしらえながら眠っている。おひとがらな田口氏が三日にいちどくらい来て、では仲井さんお頼みしますと言い置いて帰ってゆく。語り手は原稿を書くこと以外のすべてをやった——なぜならさいわい自分にはそんなものを書く手腕も見識もなかったから、と言う。やがて月給日に社長からあっさり馘だと宣告され、失望と驚きにうたれる。「きみにも不満はあるかしらんけど、こっちゃにも云いたいことはあるねんけど」と関西弁でなだめられ、彼はそこを去った。そうして天青とも別れたのである。天青が死んだと知らせて来たのは、あのおひとがらな田口詩楼氏からの手紙だった。人生はどっちにしても苦しい、苦しむなら自分のほんもので——そんなきざな教訓みたようなことを言ってしまったものさ、と語り手は照れる。ところで十八枚くらいの娯楽性のある小説の種はないかね、女房のお産もお産なんだが——そう言いかけて、かすとりはもうおしまいである。
登場人物
- おれ かすとりを飲みながら語る男
- 仲井天青 先ごろ死んだ呑ん兵衛
- 田口詩楼 おひとがらな人物。天青の死を知らせる
冒頭部(原文より)
一 ――仲井天青が死んだのを知ってるかい。知らないって、あの呑ん兵衛の仲井天青だぜ、きみが知らない筈はないんだがなあ。
「陽気な客」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
――ところで十八枚くらいのライトモチイブの娯楽性のある小説の種はないかね。女房のお産もお産なんだが、それはそれとして、まあそれもあるが、……ちえっ、もう酒もなしか。
「陽気な客」山本周五郎(青空文庫)
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