夜釣(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
夜釣の男と手桶の大鰻
- 怪奇
- 文字数
- 2,648字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
泉鏡花の短編。1911年(明治44年)、「新小説」に発表された。大工の女房から聞いた話という形をとり、釣り好きの職人が夜釣りに出たまま帰らなくなる顛末を、短い場面の積み重ねで語る小品。釣り文学の選集にも収められている。
あらすじ
語り手が、大工・大勝のおかみさんから聞いた話。牛込築土前に住む職人の岩次は、遊びはしないが生まれつきの釣り好きで、とくに鰻釣りが得意だった。女房は後生願いで、その殺生をひどく気に病んでいた。霜月の末、妙に生暖かい風の吹く夕暮れ、岩次はいつになく気のはやる様子で友だちのもとへ行くと言って家を出る。ところが夜になっても、翌日の昼になっても帰らない。女房は茶飯屋で、夜中に降りかけた雨に空を見上げた岩次が、また駆け出して行ったと聞き、日暮れに急いで家へ戻る。すると二人の子が、「父さんは帰らないけれど、大きな長い鰻が台所の手桶にいる」と言う。二人で石をのせて蓋をしたのだという。女房が台所へ駆け込み、重い沢庵石をどかして蓋を外すと、手桶の中には鰻が一本だけ、輪をぬめらせ、尖った頭をもたげて、女房の青ざめた顔をじっと見つめていた。
登場人物
- 岩次 大勝のもとへ出入りする職人。釣り好き
- 女房 岩次の妻。殺生を気に病む
- 大勝のおかみさん 語り手にこの話を聞かせた人
冒頭部(原文より)
これは、大工、大勝のおかみさんから聞いた話である。 牛込築土前の、此の大勝棟梁のうちへ出入りをする、一寸使へる、岩次と云つて、女房持、小児の二人あるのが居た。飲む、買ふ、摶つ、道楽は少もないが、たゞ性来の釣好きであつた。
「夜釣」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
もの音もきこえない。 蓋を向うへはづすと、水も溢れるまで、手桶の中に輪をぬめらせた、鰻が一條、唯一條であつた。のろ/\と畝つて、尖つた頭を恁うあげて、女房の蒼白い顔を熟と視た。――と言ふのである。
「夜釣」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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