雪と泥(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
浅草の盛り場に生きる女たち
- 歴史
- 心理
- 文字数
- 19,998字
- 読了目安
- 約40分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
山本周五郎が1954年(昭和29年)、「オール讀物」に発表した時代小説。浅草の盛り場で、たち昏みを装って世間知らずの男から金を巻き上げる女・おしの。そんな裏稼業の女たちの世界を舞台に、雪のように清らかなものと、泥のように汚れたものとが交錯する人間模様を描く一編である。
あらすじ
「たち昏みのまねをしてみせただけさ」——おしのは、伝法院の門のあたりで、仲間のお勝といっしょに、おとなしそうな若い男のうしろから追いぬきざま、ふらふらっと倒れかかってみせる。そうやって世間知らずの「鴨」から金を巻き上げるのが、彼女の手口だった。姐さん株のおつねは「それは罪だよ、いまにひどいめにあうよ」とたしなめるが、若いちよのは面白がって話をせがむ。浅草の盛り場を舞台に、たくましくも危うい暮らしを立てる女たち——そこには、雪のように清らかなものと、泥のように汚れたものとが、分かちがたく入りまじっている。日掛けの取り立てにも追われ、「取られるものはきちんと取られる、こうなると日掛も楽じゃないわね」とおしのは苦笑する。裏町に生きる女たちの哀歓を、突き放しつつも温かいまなざしで描いた、山本の一編である。
登場人物
- おしの たち昏みを装って金を巻き上げる女
- おつね 姐さん株の女
- ちよの 若い女
冒頭部(原文より)
「好い男っていうんじゃあないんだ、うん、おとなしくって気の弱そうな性分が、そのまま顔に出てるって感じさ、まだ若いんだ」 「もういいかげんにおよしよ、おまえさん、それは罪だよ」おつねが頸筋へ白粉をぬりながら云った、「それに世間にゃそうそう鴨ばかりいるもんじゃないからね、いまにひどいめにあうよ」
「雪と泥」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
おつねがそう云いかけたとき、格子をあけて、女のしゃがれた声が聞えた。 「ごめん下さい、おしの姐さんおいでですか」 「ああいますよ」おしのはきせるを置いて、立ちあがりながら云った、「取られるものはきちんと取られる、こうなると日掛も楽じゃないわね」
「雪と泥」山本周五郎(青空文庫)
原文を読む
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