雪だるま(アンデルセン)のあらすじ・登場人物
ストーブに恋した雪だるま
- 幻想
- 翻訳
- 文字数
- 6,743字
- 読了目安
- 約13分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
アンデルセンが1861年に発表した童話(原題「Sneemanden」)を、矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『人魚の姫 アンデルセン童話集Ⅰ』)。庭に作られた雪だるまが、地下室の窓から見える鉄のストーブにあこがれる話。鎖につながれた年寄りのイヌが話し相手となり、冬の朝の霜の景色や、鎖につながれた身の上話も織りまぜて語られる。報われない恋というモチーフを、雪だるまの素朴な語り口で描いた、切なく美しい小品である。
あらすじ
寒い夜、男の子たちに作られたばかりの雪だるまは、お日さまをにらみつけ、お月さまを不思議がる。鎖につながれた年寄りのイヌが、お日さまが走り方を教えてくれると言い、自分は昔お屋敷の部屋の中で飼われていたが、骨をけとばした坊ちゃんにかみついて鎖につながれたのだと語る。雪だるまは、地下室の窓ごしに、しんちゅうの胴を持つまっ黒なストーブを見つけ、その赤い炎に強く心を引かれる。イヌは「雪だるまにはわるい病気だ」と言うが、雪だるまはストーブに近づきたいと願いつづける。やがて天気が変わって暖かくなり、雪だるまは崩れてしまう。あとにはストーブの火かき棒が立っており、子供たちが雪だるまのしんにしたものだった。イヌは、それでストーブを恋しがっていたわけがわかったと言い、冬は過ぎて春の歌がうたわれ、雪だるまを思い出す人はいなくなる。
登場人物
- 雪だるま 目は屋根がわらのかけら。ストーブにあこがれる
- 鎖につながれた年寄りのイヌ 雪だるまに身の上を語る
- 若い娘と男 庭を通りかかるいいなずけ
冒頭部(原文より)
「ぼくのからだの中で、ミシミシ音がするぞ。まったく、すばらしく寒いや!」と、雪だるまが言いました。「風がピューピュー吹きつけて、まるで命を吹きこんでくれようとしているようだ。だが、あの光ってるやつは、いったい、どこへ行くんだろう? あんなにギラギラにらんでいるぞ!」雪だるまが、そう言っているのは、お日さまのことでした。お日さまは、いまちょうど、しずもうとするところだったのです。「あんなやつが、いくらまばたきさせようったってまばたきなんかするもんか。まだまだこのかけらが、しっかりと目にくっついているんだからな」 雪だるまの目になっているのは、大きな三角の形をした、二枚の屋根がわらのかけらだったのです。口は、古い、こわれた草かきでできていました。ですから、雪だるまには、歯もあったわけです。 この雪だるまは、男の子たちが、うれしそうに、ばんざい、とさけんだのといっしょに、生れてきたのでした。そしてそのとき、そりの鈴の音や、むちの音が、ちょうど挨拶でもするように、雪だるまをむかえてくれました。
「雪だるま」アンデルセン(青空文庫)
末尾部(原文より)
「ワン! ワン! おしまいだ、おしまいだ!」と、くさりにつながれているイヌが、ほえました。お屋敷では、小さな女の子たちがうたいはじめました。 クルマバソウよ! 青いきれいな芽をお出し! ヤナギは毛糸の手袋おぬぎ! カッコウ、ヒバリがきて鳴けば、 楽しい春が、もうきます! わたしもいっしょにうたいましょ! カッコウ! やさしいお日さま、はあやくきてよ! 今はもう、雪だるまのことを思い出す人は、だれもありませんでした。
「雪だるま」アンデルセン(青空文庫)
原文を読む
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