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雪渡り(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物

堅雪かんこ、しみ雪しんこ

  • 幻想

宮沢賢治 1921年(大正10年)12月 「愛国婦人」

文字数
6,537字
読了目安
約13分
表記
新字新仮名

この作品について

宮沢賢治が1921年12月と翌年1月の雑誌『愛国婦人』に発表した童話。凍った雪の上をどこまでも歩ける晴れた日、四郎とかん子の兄妹が小狐の紺三郎と出会い、狐の幻燈会に招かれる。「堅雪かんこ、しみ雪しんこ」というはやし歌や、雪を踏む音の繰り返しが、冬の野原を行く二人の足取りに弾みをつける。雪や空を鉱物や植物になぞらえる描写も印象的だ。賢治が生前に原稿料を得た作品としても知られる。

あらすじ

雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなった日、四郎とかん子は小さな雪沓をはいて野原へ出た。いつもは歩けない畑の上も、すすきの原も、どこまでも行ける。「堅雪かんこ、しみ雪しんこ」と歌いながら森へ近づいた二人の前に、白い小狐の紺三郎が現れる。狐が人をだますというのはまるきりの嘘です、と紺三郎は熱心に訴え、自分で畑を作って粉にして蒸した黍団子をすすめ、次の雪の凍った月夜に開く幻燈会へ二人を招待した。約束の晩、四郎とかん子は森の幻燈会に出かける。生徒の父兄以外の十二歳以上の来賓は入れない会場では、狐の学校の生徒たちが待っていた。幻燈に酔って失敗した人間の写真が映った後、狐の子が黍団子を持ってくる。四郎は不安になりながらも、紺三郎はだまさないと決心し、かん子とともに団子を食べた。続いて、わなにかかった狐や、しっぽに火がついた狐の絵が映される。閉会の辞で紺三郎は言う。「今夜みなさんは深く心に留めなければならないことがあります。それは狐のこしらえたものを賢いすこしも酔わない人間のお子さんが喰べて下すったという事です」。狐の生徒たちはみな感動し、きらきら涙をこぼして立ち上がった。帰り道、狐たちはどんぐりや栗や青びかりの石を二人のふところに入れてくれる。青白い雪の野原のまん中で、二人は迎えに来た兄さんたちの黒い影に出会うのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり、空も冷たい滑らかな青い石の板で出来ているらしいのです。 「堅雪かんこ、しみ雪しんこ。」  お日様がまっ白に燃えて百合の匂を撒きちらし又雪をぎらぎら照らしました。  木なんかみんなザラメを掛けたように霜でぴかぴかしています。 「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。」  四郎とかん子とは小さな雪沓をはいてキックキックキック、野原に出ました。

「雪渡り」宮沢賢治(青空文庫)

末尾部(原文より)

 紺三郎が二人の前に来て、丁寧におじぎをして云いました。 「それでは。さようなら。今夜のご恩は決して忘れません。」  二人もおじぎをしてうちの方へ帰りました。狐の生徒たちが追いかけて来て二人のふところやかくしにどんぐりだの栗だの青びかりの石だのを入れて、 「そら、あげますよ。」「そら、取って下さい。」なんて云って風の様に逃げ帰って行きます。  紺三郎は笑って見ていました。  二人は森を出て野原を行きました。  その青白い雪の野原のまん中で三人の黒い影が向うから来るのを見ました。それは迎いに来た兄さん達でした。

「雪渡り」宮沢賢治(青空文庫)

名文

雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり、空も冷たい滑らかな青い石の板で出来ているらしいのです。 「堅雪かんこ、しみ雪しんこ。」

物語の書き出し。雪が凍って野原のどこへでも歩いて行ける冬の日の喜びを、子供たちの囃し言葉が弾むように伝え、狐の子との出会いへと誘う。

原文を読む

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