湯女の魂(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
湯女お雪の魂を預かる旅
- 怪奇
- 幻想
- 文字数
- 27,922字
- 読了目安
- 約56分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 富山県
この作品について
明治33年(1900)5月、『新小説』臨時増刊に発表された泉鏡花の怪異譚。講談調の語りで、越中の小川温泉に泊まった学生小宮山良助が、友人の篠田と縁のある湯女お雪を襲う夜の怪異に出会う。お雪の魂を預かって東京へ戻るまでの不思議な体験を描く。
あらすじ
語り手は「真言宗の九字」の話から入り、越中の旅の物語を語りはじめる。学生の小宮山良助は北陸を旅し、友人の篠田から聞いた湯女お雪を訪ねるため、泊の町から山道を三里半、小川温泉の柏屋に泊まる。仲居は、お雪が病気で、毎夜同じ時刻に魘されると語り、小宮山にその夜、傍に寝てやってほしいと頼む。小宮山は快諾し、お雪から話を聞くと、お雪は毎晩、見知らぬ女に孤家へ連れ出され、嫉妬で死んだ怨霊の肋骨で打たれる夢を見るのだという。「男を思い切れ」と責められるが、どうしても思い切れないと泣くお雪を、小宮山は熱の幻だと慰める。夜更け、大きな蝙蝠が部屋に入り込み、お雪が引き出されるように外へ出ていく。小宮山は追いかけ、野の中の孤家で、青白い衣を着た年増の女に会う。女は小宮山を動けなくしたうえで、蝙蝠に化けてお雪の息を吸い、その魂を篠田のもとへ届けるよう小宮山に託す。気がつくと小宮山は柏屋の座敷に戻っており、お雪は死んだように眠っていた。翌日出立した小宮山は、直江津でも汽車の中でも、お雪の面影に付きまとわれる。雨の夜、本郷の篠田の下宿へ駆けつけて「託り物を渡した」と告げると、篠田はお雪がたった今まで部屋にいたと言う。後日、小川から小包が届き、お雪の死が知らされた。
登場人物
- 小宮山良助 越中を旅する東京の学生
- お雪 小川温泉の柏屋の湯女。篠田との縁で病んでいる
- 篠田 小宮山の友人。お雪の思い人
- 柏屋金蔵 柏屋の主人。臆病な男
- 孤家の女 青い衣をまとい、蝙蝠に化ける怪しい年増
冒頭部(原文より)
誠に差出がましく恐入りますが、しばらく御清聴を煩わしまする。 八宗の中にも真言宗には、秘密の法だの、九字を切るだのと申しまして、不思議なことをするのでありますが、もっともこの宗門の出家方は、始めから寒垢離、断食など種々な方法で法を修するのでございまして、向うに目指す品物を置いて、これに向って呪文を唱え、印を結んで、錬磨の功を積むのだそうでありまする。
「湯女の魂」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
翌日取も置かず篠田を尋ねて、一部始終悉しい話を致しますると、省みて居所も知らさないでいた篠田は、蒼くなって顫え上ったと申しますよ。 これから二人連名で、小川の温泉へ手紙を出した。一週間ばかり経って、小宮山が見覚のあるかの肌に着けた浴衣と、その時着ておりました、白粉垢の着いた袷とを、小包で送って来て、あわれお雪は亡なりましたという添状。篠田は今でも独身で居りまする。二人ともその命日は長く忘れませんと申すのでありまする。 飛んだ長くなりまして、御退屈様、済みませんでございました、失礼。
「湯女の魂」泉鏡花(青空文庫)
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