幽霊(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
死んだはずの男の幽霊
- ミステリ
- 文字数
- 11,972字
- 読了目安
- 約24分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
江戸川乱歩が1925年(大正14年)、「新青年」に発表した明智小五郎ものの短編。長年つきまとって仇を狙っていた男・辻堂が病死したと聞かされた実業家・平田氏は、かえって不安にかられる。あいつが本望を遂げずに死ぬはずがない——。「幽霊」に脅える平田氏の前に、名探偵・明智小五郎が現れる一編である。
あらすじ
実業家の平田氏は、腹心の者から「辻堂の奴、とうとう死にましたよ」と聞かされて、かえって少なからず驚いた。辻堂は、平田氏を執念深くつけ狙い、「彼奴のどてっ腹へこの短刀を突きさすまでは死んでも死に切れない」と口癖のように言っていた男である。その辻堂が、本望を遂げもせずに病死したとは、どうにも信じられない。やがて平田氏は、死んだはずの辻堂の影に脅えるようになる。あれは本当に死んだのか、それとも——。この奇妙な事件に、名探偵・明智小五郎が乗り出す。明智がたどりついた真相は、意表を突くものだった。辻堂は死を装っていたのだ。だがそのからくりは、戸籍謄本のわずかな細工にあった。戸主でない者なら、名前の上に朱を引き、上欄に死亡届の記載を書き加えるだけで、生きている人間を「死んだこと」にできてしまう——役所の書類を無条件に信じてしまう人の心の隙を、辻堂は突いたのだ。こうして実業家・平田氏の交友録に、素人探偵・明智小五郎の名が書き加えられたのだった。
登場人物
- 平田氏 仇を狙われる実業家
- 辻堂 死を装って平田を狙う男
- 明智小五郎 素人探偵
冒頭部(原文より)
「辻堂の奴、とうとう死にましたよ」 腹心のものが、多少手柄顔にこう報告した時、平田氏は少からず驚いたのである。尤も大分以前から、彼が病気で床についた切りだということは聞いていたのだけれど、それにしても、あの自分をうるさくつけ狙って、仇をうつことを生涯の目的にしていた男が、その目的を果しもしないで死んで了ったとは、どうにも考えられなかった。
「幽霊」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
実業家平田氏の交友録に、素人探偵明智小五郎の名前が書き加えられたのは、こうしたいきさつからだった。
「幽霊」江戸川乱歩(青空文庫)
原文を読む
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