ヘンゼルとグレーテル(グリム兄弟)のあらすじ・登場人物
お菓子の家で待っていたのは
- 幻想
- 翻訳
- 文字数
- 9,987字
- 読了目安
- 約20分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
大ききんの年、口べらしのために森へ捨てられた木こりの兄妹が、お菓子の家に住む人食いの魔女にとらえられ、知恵をしぼって生きて帰るまでを描くグリム童話の一篇。楠山正雄の訳で、白い小石をこぼしながら歩く一度目と、パンくずを落として鳥に食べられてしまう二度目との対比、指のかわりに骨を出して魔女をあざむく場面など、残酷さと機知が同居する原話の骨格がそのまま日本語になっている。オペラや絵本を通じて世界中で親しまれてきた物語である。
あらすじ
大きな森のそばに住む貧しい木こりの一家は、国じゅうの飢饉で日々のパンにも困るようになる。継母は「子どもたちを森の奥に置き去りにしよう」と言い出し、気の進まぬ父もついに折れた。話を立ち聞きした兄のヘンゼルは、月あかりに光る白い小石を拾ってポケットに詰め、道々こぼしながら歩いて、妹のグレーテルと無事に家へ帰りつく。しかし飢饉はやまず、二度目に連れ出されたときは戸に錠がおろされていて小石が拾えない。ヘンゼルはパンをちぎってまいたが、くずは鳥に食べつくされ、兄妹は本当に森の中で道を失ってしまう。三日目、白い鳥に導かれてたどり着いたのは、パンの壁に砂糖の窓のついた小さな家だった。夢中でかじる二人を迎え入れたのは、子どもをおびき寄せては食べる目の悪い魔女である。ヘンゼルは檻に入れられて太らされ、グレーテルは下働きをさせられる。ヘンゼルは指のかわりに細い骨を差し出して痩せたままだと思いこませ、やがてグレーテルは、かまどをのぞけとせまる魔女を逆に押しこんで——。真珠と宝石を前掛けにいっぱい詰めた兄妹は、水鳥の背に乗って川を渡り、父のもとへ帰りつく。
登場人物
- ヘンゼル 木こりの息子。白い小石とパンくずで帰り道をしるす兄
- グレーテル その妹。最後に魔女をかまどへ押しこむ
- 木こり 貧しさから子どもを森へ置き去りにする父
- おかみさん 置き去りを言い出す継母
- 魔女 お菓子の家で子どもをおびき寄せる、目の悪い人食い
冒頭部(原文より)
一 まずしい木こりの男が、大きな森の近くにこやをもって、おかみさんとふたりのこどもとでくらしていました。ふたりのこどものうち、男の子がヘンゼル、女の子がグレーテルといいました。しがなくくらして、ろくろく歯にあたるたべものを、これまでもたべずに来たのですが、ある年、国じゅうが大ききんで、それこそ、日日のパンが口にはいらなくなりました。木こりは、晩、寝床にはいったものの、こののち、どうしてくらすかかんがえると、心配で心配で、ごろごろ寝がえりばかりして、ためいきまじりに、おかみさんに話しかけました。 「おれたち、これからどうなるというんだ。かわいそうに、こどもらをどうやってくわしていくか。
「ヘンゼルとグレーテル」グリム兄弟(青空文庫)
末尾部(原文より)
ところで、おかみさんも死んでしまっていました。 グレーテルは、前掛をふるいました。すると、真珠と宝石が、おへやじゅうころがりだしました。こんどは、ヘンゼルが、かくしに片手をつっこんで、なんどもなんどもつかみだしては、そこにばらまきました。 まずこんなことで、心配や苦労はきれいにふきとんでしまいました。親子三人それこそうれしいずくめで、いっしょになかよく、くらしました。 わたくしの話もこれで市がさかえました。ほら、あすこに、小ねずみがちょろちょろかけていますね。たれでもつかまえた人は、あれで、大きな毛皮のずきんを、ごじぶんでこしらえてごらんなさい。
「ヘンゼルとグレーテル」グリム兄弟(青空文庫)
名文
ちょうどお月さまが、ひるのようにあかるく照っていて、うちの前にしいてある白い小砂利が、それこそ銀貨のように、きらきらしていました。
森に置き去りにされると知ったヘンゼルが夜中に外へ出る場面。月光に光る小石が、兄妹の帰り道を照らす知恵となる。
ふたりがこやのすぐそばまで行ってみますと、まあこのかわいいこやは、パンでできていて、屋根はお菓子でふいてありました。おまけに、窓はぴかぴかするお砂糖でした。
森で迷った兄妹がたどり着いたお菓子の家。飢えた子供の夢そのものの光景が、同時に甘い罠でもある。
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。