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城(カフカ)のあらすじ・登場人物

呼ばれたはずの城へ届かない

  • 社会
  • 翻訳

カフカ 訳者 原田義人 1959年(昭和34年)12月 「書き下ろし」

文字数
365,405字
読了目安
約12時間11分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

伯爵に招かれた測量技師だと名のる男Kが、雪に埋もれた村へ夜遅くたどり着く。丘の上の城に用があるはずなのに、城へ向かう道は近づくようで近づかず、役所の誰にも会えない——。フランツ・カフカが1922年1月に書き始め、同じ年の秋に手放した最後の長編(原題 DAS SCHLOSS)。作者の死後、1926年に友人マックス・ブロートの編集で刊行された。区切りだけの原稿をブロートが二十章に整えたもので、話は途中で途切れている。宿屋の酒場や村長の家、城の使者の一家で交わされる長い会話がそのまま続き、村人の語る役人たちの噂や書類の手続きの細かさが、Kと城とのあいだに積み上がってゆく。三つの長編のうち最も遅く、最も長い作品で、映画やオペラにもなった。ドイツ文学者・原田義人の訳で、底本は筑摩書房『世界文学大系58 カフカ』(1960年)。

あらすじ

晩遅く、雪に埋もれた村に着いたKは、城の執事の息子に滞在の許可がないととがめられ、自分は伯爵に招かれた測量技師だと名のる。城は電話でいったんこれを認めるが、翌朝Kが城へ向かって歩いても、道は城に近づかないまま村の中をめぐるばかりだった。城から助手としてアルトゥールとイェレミーアスの二人があてがわれ、使者バルナバスが城の役人クラムの手紙を届けるが、手紙はKの仕事の中身にふれない。Kはクラムに近づこうとして役人の泊まる紳士荘の酒場に入り、クラムの愛人だという女給フリーダと知り合って、その夜のうちに結ばれる。フリーダは酒場をやめてKと橋亭に移り、二人は婚約する。だが橋亭のおかみは、クラムにじかに会おうとするKの考えを厳しくいさめ、村長は、Kの招聘は役所どうしの手違いが積み重なって生まれたもので、村に測量の仕事などないと長々と説明する。Kは村長のはからいで学校の小使の職を受け、フリーダや助手たちと教室に寝泊まりするが、クラムを待ち伏せしても会えず、秘書モームスの調書も拒む。やがてKはバルナバスの家に入りびたるようになり、姉のオルガから、妹アマーリアが城の役人ソルティーニのみだらな呼び出しをはねつけたために、一家が村じゅうから避けられるようになった顛末を聞く。そのあいだにフリーダは、Kが自分をクラムに近づく道具にしていると疑い、助手のイェレミーアスとともに紳士荘へ戻ってしまう。夜ふけ、秘書エルランガーに呼び出されたKは、紳士荘の廊下でまちがえて別の秘書ビュルゲルの部屋に入る。ビュルゲルは、役所の手続きのすき間で陳情者の願いがかなってしまう瞬間があると語りつづけるが、Kはそのあいだ眠りこんでいた。翌朝Kは、フリーダの後がまの女給ペーピーから、女中部屋でいっしょに暮らそうと誘われ、ついで紳士荘のおかみに服が流行おくれだと言ってしまって怒らせる。物語はそこで途切れている。

登場人物

冒頭部(原文より)

 Kが到着したのは、晩遅くであった。村は深い雪のなかに横たわっていた。城の山は全然見えず、霧と闇とが山を取り巻いていて、大きな城のありかを示すほんの微かな光さえも射していなかった。Kは長いあいだ、国道から村へ通じる木橋の上にたたずみ、うつろに見える高みを見上げていた。  それから彼は、宿を探して歩いた。旅館ではまだ人びとがおきていて、亭主は泊める部屋をもってはいなかったが、この遅い客に見舞われてあわててしまい、Kを食堂の藁ぶとんの上に寝かせようとした。Kはそれを承知した。二、三人の農夫がまだビールを飲んでいたが、Kはだれとも話したくなかったので、自分で屋根裏から藁ぶとんをもってきて、ストーブのそばで横になった。部屋は暖かく、農夫たちは静かだった。Kは疲れた眼で彼らの様子をうかがっていたが、やがて眠りこんだ。

「城」カフカ(青空文庫)

末尾部(原文より)

 彼女は引き戸をみな開けた。すると、服が戸棚の幅いっぱい、奥行いっぱいにぎっしりとつまっていた。たいていは暗色と灰色と赤色と黒の服で、すべて念入りにかけてあり、拡げてあった。 「みんなわたしの服よ。みんなあなたのいうように古くさくて、ごてごて飾りすぎているわ。でも、これはただ、上のわたしの部屋にはしまうところがない服ばかりなのよ。上にはまだいっぱいつまった戸棚が二つあるわ。戸棚二つよ。どれもこれと同じくらいの大きさなのよ。どう、驚いた?」 「いいえ、まあそんなことだろうと思っていました。私はいったはずですよ、あなたはただのおかみじゃなくて何か別なものを目ざしているって」 「わたしが目ざしているのは、ただ美しい服を着るということだけですよ。あなたはばかか、子供か、それともひどく性悪で危険な人間かなのだわ。出ていきなさい、もう出ていってちょうだい!」  Kは早くも玄関へ出ていたが、ゲルステッカーがまた彼の袖をしっかとつかんだ。そのとき、おかみがKのうしろから声をかけた。 「あした、新しい服が手に入るわ。おそらくあなたを迎えにだれかをやるでしょうよ」

「城」カフカ(青空文庫)

名文

Kが到着したのは、晩遅くであった。村は深い雪のなかに横たわっていた。城の山は全然見えず、霧と闇とが山を取り巻いていて、大きな城のありかを示すほんの微かな光さえも射していなかった。

カフカ『城』の書き出し。測量技師だと名のるKが雪の村に着く夜の情景で、目指す城は最初から霧と闇の中に隠れている。

Kは城に眼を向けたまま、歩みつづけた。ほかには彼の気にかかるものは何もなかった。ところが、近づくにつれ、城は彼を失望させた。それはほんとうにみじめな小さな町にすぎず、田舎家が集ってつくられていて、ただおそらくどの家も石でつくられているということによってきわだって見えるだけだった。

Kが初めて城へ向かって歩く場面。遠くでは城らしく見えた建物が、近づくとみすぼらしい家の集まりにすぎない。期待と現実のずれが物語を貫く。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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