謡曲とは

分類
形式・ジャンル
読み
ようきょく

能の詞章、つまり能の台本の文章を、文学作品として見るときの呼び名。節をつけて謡うことも含めて「謡」ともいう。能の台本は古くは「能本」と呼ばれ、「謡曲」の語が広く使われるようになったのは江戸時代後期以降である。一曲は序・破・急の五段を基本とし、次第・名ノリ・クリ・サシ・クセなどの小段を連ねて組み立てられる。節のついた韻文と、候文調のせりふ(コトバ)とが交じり、古歌や漢詩の句を引き、掛詞や縁語を重ねて連想をつなぐ文体に特色がある。作者は観阿弥・世阿弥・金春禅竹・観世信光らの能役者で、題材の多くを『伊勢物語』『源氏物語』『平家物語』などの古典や伝説に求めた。現行曲は約240〜250曲とされる。江戸時代には謡本が盛んに出版され、謡は能の舞台を離れて武士や町人の稽古事として広まった。坂口安吾『保久呂天皇』で、男が「「鉢の木」という謡曲をうなりながら」通る姿にも、謡が暮らしに根づいていたことがうかがえる。近代の作家も謡曲を素材とし、芥川龍之介『俊寛』(大正11年)は謡曲などで語り継がれた俊寛の伝承を下敷きにし、岡本綺堂『玉藻の前』は謡曲『殺生石』でも知られる九尾の狐の伝説に拠った。折口信夫は『身毒丸』(大正6年)を謡曲『弱法師』との関係を考えながら書き、泉鏡花『歌行灯』(明治43年)では謡曲『海人』の「玉之段」が物語の山場を彩る。

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