風刺とは

分類
文体・技法
読み
ふうし

社会の悪や愚かさ、権力者や世の風潮を、遠回しの言い方や誇張、笑いによって批判すること。また、そうした意図をもつ表現や作品。諷刺とも書く。正面からの批判とちがい、皮肉やからかい、ありえない設定を借りて読者を笑わせながら、その裏にある問題に気づかせる。古代ローマの風刺詩に始まる西洋の伝統では、スウィフトの『ガリヴァー旅行記』(1726年)が代表で、小人国・大人国などの奇妙な国々への旅を借りて、当時のイギリスの政治と人間そのものを辛辣に批評した。ゴーゴリの『鼻』や魯迅の『阿Q正伝』も、笑いのなかに鋭い社会批判をひそませている。日本では、江戸の狂歌・川柳や戯作が世相をうがつ笑いを育て、明治には斎藤緑雨が「正直正太夫」の名で文壇や世態を皮肉る警句や評論を書き、小説『油地獄』『かくれんぼ』にも人物をからかうような語り口を見せた。夏目漱石の『吾輩は猫である』は、猫の目を通して明治の知識人たちを笑い、芥川龍之介の『河童』(昭和2年)は、河童の国の習慣を報告する形で、人間社会の家族・恋愛・芸術・宗教を裏返しに映し出した。風刺は時代の権力と緊張関係にあり、表現が統制される時代にはしばしば抑えこまれてきた。

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