今昔物語集とは

分類
形式・ジャンル
読み
こんじゃくものがたりしゅう

12世紀前半の成立とされる、日本最大の説話集。天竺(インド)・震旦(中国)・本朝(日本)の三部、全31巻に約千話を収める(巻八・十八・二十一は欠けている)。すべての話が「今は昔」で語り起こされ、書名もこれに由来する。編者も正確な成立年も明らかでない。仏教の霊験や因果の話と、貴族・武士・盗賊・庶民らの世俗の話とを並べ、人間の欲や滑稽、恐れを生々しく伝える。文章は漢字と片仮名を交ぜた和漢混淆文で、簡潔で力強い。近代文学では、芥川龍之介が『羅生門』『鼻』『芋粥』『藪の中』などの題材をこの集に求め、古い説話の骨格に近代人の心理を吹き込んだ。芥川はほかにも『運』『六の宮の姫君』『往生絵巻』などをこの集から書き起こし、堀辰雄も『曠野』(昭和16年)で、零落した女の運命を語る本朝部の一話を王朝の物語に仕立て直している。黒澤明の映画『羅生門』(1950年)も、芥川の作品を介してこの世界とつながっている。『宇治拾遺物語』などの鎌倉期の説話集とあわせて、王朝物語が取り上げなかった無名の人々の暮らしを知る貴重な資料である。

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